1912年の創業以来、常に「開拓者精神」をモットーに事業展開を続けてきたヤンマー株式会社。自然との共生を大前提に、生命の根幹を担う食料生産とエネルギー変換の分野で、お客様の課題解決と、未来につながる社会とより豊かな暮らしの実現に取り組んできています。さらに数年前からオープンイノベーションの精神を社内に根付かせるため、様々な取り組みを行っています。

今回は、ご自身の多彩な人脈や海外でのご経験を活かし、ヤンマー株式会社のオープンイノベーション部門を統率するスペシャリスト、事業創出部専任部長 小山博幸氏にお話を聞きました。

ヤンマーのオープンイノベーションを支える事業創出部

ヤンマー株式会社 小山様(中央)とリンカーズ 三好(左)、リンカーズ 田野邊(右)

企画立案だけでなく、事業化を実現できる組織として

 リンカーズ  田野邊 リンカーズ  田野邊

本日は宜しくお願いいたします。早速ですが、事業創出部について、いつ頃からどういった経緯で設立されたものなのかをお聞かせいただけますか?

ヤンマー 小山様ヤンマー 小山様

宜しくお願いいたします。弊社でオープンイノベーションについて強く意識されだしたのが2015年頃のことでした。翌2016年には、現在の事業創出部の前身となるオープンイノベーションセンターが開設されました。

社内の6事業部から1人ずつ優秀な中堅社員を兼任という立場で集めてもらい、オープンイノベーションの専属メンバーとあわせて10人ほどでスタートしました。設立当初は、ヤンマーグループを統括するヤンマーホールディングス株式会社の所属部署という位置づけでした。しかし、あくまでもホールディングスという立場でしたので、方針を立てることや機会を提供するのにとどまり、具体策の実行まで踏み込んでいくことはできないというジレンマに陥っていました。結局、現場である事業部や研究所の人間が動かなければ何も始まらないからです。

そこで、2017年4月からヤンマー株式会社所属の事業創出部として生まれ変わることになりました。より現場に近い位置で方針を立て、それに沿って実働するという流れを一気通貫で実現できる機能を持たせたわけです。

以前から、弊社では事業部が まだ扱いきれない新規事業テーマ、 例えば「くにさきOYSTER※1」や「ミャンマーの籾殻発電※2」などにも積極的に取り組んできました。事業創出部がこういった現場の感覚を肌で感じつつ、企画立案、さらには実際の事業化を目指し舵を取っていくことで、「0から1」を生みだすことはもちろん、「1を10に」実現していく組織へと生まれ変わったのです。

※1 くにさきOYSTER

ヤンマー、大分県漁業協同組合、国東市が共同開発した生食用牡蠣。
スッキリとした味わいで、牡蠣が苦手だった人も食べられると好評。

くにさきOYSTER(https://www.kunisakioyster.com/ja/)全国のレストランや、ふるさと納税でも入手可能

※2 ミャンマーの籾殻発電

毎年大量に発生する籾殻をガス化発電システムの燃料とする取り組み。
電力供給が不安定なミャンマーや東南アジアの農業機械化に弾みをつける事業として期待が寄せられている。

ミャンマーの籾殻を活用したバイオマスガス化発電プラント

オープンイノベーションを推進する4つのミッション

 リンカーズ  田野邊 リンカーズ  田野邊

事業創出部のミッションをお聞かせください。

ヤンマー 小山様ヤンマー 小山様

オープンイノベーションを推進していくため、事業創出部において4つのミッションを掲げています。

1つ目は、技術のインバウンドです。
外部から必要とするものをタイムリーに持ってくることによって、開発の加速やコストの削減に繋がることは言うまでもありません。社外の先端技術を必要に応じて取り込み活用することは、オープンイノベーションへの意識改革の突破口のひとつです。 これからも積極的に外部のリソースを取り込んでいきたいと考えています。

2つ目は、アウトバウンド、オープンコラボレーションを活用して、本来の弊社の事業領域を拡大していくということです。
弊社の持っている技術を他業界へ展開していく、あるいは逆に、他分野の技術を私たちのマーケットへ持ち込むという活動を目指しています。

3つ目が、不連続性へのチャレンジです。
当然ですが、事業部ではもちろん日々の業務がありますから、どうしても目の前の課題に傾倒しがちです。しかし、業界の動向やトレンドを把握して中長期的な視点でものを見極める力を磨いていかないと、目まぐるしく変わる市場環境の中で世界を相手に戦っていくことはできません。

例えば、昨今の環境問題等の影響もあり、欧州ではEV車が定着しつつあり、ガソリン車やディーゼル車は規制の方向へと進み始めています。そのような世界情勢の中、従来のように「このエンジンは、今後こう伸びていく…」という既定路線に沿って考えるだけでは、競争に勝ち抜いていくことはできません。 農機、建機、舶用エンジンも当然ながら大きな影響を受けます。 大きな危機感を持って将来ビジョンを描いていく必要があります。

そこで、今持っている技術の延長線にこだわらない、新分野のベンチャーリングの活動にも注力しています。 また、国内外の大学との産学連携を強め、デザインシンキングという手法を採り入れています。今までの技術オリエンテッドな考え方ではなく、ユーザーも気づいていない潜在的な課題の解決策を模索していこうというユーザーセントリックな開発アプローチを導入しています。

4つ目として、このようなオープンイノベーションの考え方を社内全体に浸透させるため、各組織の中でリーダーシップを取っていくことができる人材の育成にも力を入れています。

技術のインバウンドこそオープンイノベーションの重要なポーション

 リンカーズ  田野邊 リンカーズ  田野邊

このような形で事業創出部を立ち上げた成果はいかがでしょうか?


ヤンマー 小山様ヤンマー 小山様

月に1回ほどの割合で定例会を開き、地道なオープンイノベーション推進の啓蒙活動を続けてきたことで、確かな手応えを感じています。

「事業創出」という本来の意味での成果はまだこれからですが、事業創出部兼任のメンバーが各事業部からのヒアリング結果を持ち寄る定例会を通じて、確実に社内の意識は変わりはじめました。事業部の枠を超えた課題の共有、協働によるソリューション提案等、組織横断的にメンバーが集まることで、今まで無かった社内オープンイノベーションの土壌が出来つつあります。

先ほどの話の中にもありましたが、私は常々、オープンイノベーションの大切なポーションの一つが、技術のインバウンドだと考えています。特に、自前主義が強い閉鎖的な会社にとって、「必要な技術をタイムリーに外から中へと持ってくる」という活動をまずは着実に根付かせることが重要です。とはいうものの、「自分たちにないもので欲しいものがあったら提案するように」と伝えてもなかなか声が上がってくるわけではありません。そこで、事業創出部兼任メンバーたちによる地道なヒアリングや説明会を繰り返し、何とか少しずつでもニーズを拾い上げていってます。

もちろん、それでも「それは品質問題、新商品開発問題だから、他社に知られては困る」といった抵抗も出てきます。本当に困っているはずなのに、すべて自分たちの力だけで解決しなければならないと思い込んでいるのです。本来は「どうやって解決するか」に注力するべきなのに、「自分たちで解決する」ということに時間を割いてしまっているというわけです。まずはその自前主義の意識を変えるため、外部の力を上手く利用することで余った時間を新たな開発に費やすことができるというメリットを丁寧に説明し、社内全体に浸透させるよう努めました。 最近は、開発現場のみならず、製造現場からもニーズが上がってくるようになってきました。

横串しの組織にすることで、全社課題の共有も可能に

また、そうして少しずつ集まったヒアリング結果を月に1回の事業創出部の定例会に持ってくると、1つの事業部の中では見えてこない全社的な課題も発見されます。複数の事業部で問題をシェアできるというのは、事業創出部の定例会が生みだした素晴らしい副産物だといえるでしょう。

オープンイノベーションセンターの設立から数えると、2018年4月で3年目を迎える事業創出部ですが、事業部同士の横の繋がりがさらなる相乗効果を生みだすと信じ、事業部の枠を超えた取り組みを巻き起こしていきたいと考えています。

オープンイノベーションが生みだす新しい価値を探して

新しい価値の創出のために

 リンカーズ  田野邊 リンカーズ  田野邊

今、3つ目のお話で、新しい価値の創出というところが大きな目標になっていると感じたのですが、大学やベンチャー企業との連携で求めている技術としては、どのようなものをお考えでしょうか?

ヤンマー 小山様ヤンマー 小山様

まだまだ模索中なのですが、必ずしもエンジン関係に限らず、弊社のビジネスミッションにマッチする技術を広く求めていきたいと考えています。

弊社は、食料生産とエネルギー変換という大きなビジネスミッションを掲げています。広大なテーマなだけに多くの企業様からオファーを頂いておりますが、そういった中でどういったパートナーと連携すべきか、けっこう難しい課題です。

例えば、自分たちの持っていないアーリーステージの技術を採り入れたいという思いもありながら、知見の無い分野だけに実際にそれをハンドリングできるかという課題もあります。それならば、ハードルの低い隣接領域から探していくということになりますが、でもやっぱり最新の技術は見逃せない(笑)。そんな相反する思いの中で、広い視野を持ちながらバランスよく探していっているというのが現状です。

 リンカーズ  田野邊 リンカーズ  田野邊

こういった相手企業様の絞り込みで、特にお困りのことはございますか?


ヤンマー 小山様ヤンマー 小山様

キーワードを投げかけるとたくさんの候補が上がってくるのですが、差別化が難しいと感じることはよくあります。

弊社の場合、例えば「農業×IoT」というワードで募集をかければ、非常に多くの提案が上がってきます。その際、明らかに差別化された技術を持っている企業であればわかるのですが、細かな違いだけでは判別できないというのが正直な感想です。

そのため、従来の農作業だけにフォーカスをあてるのではなく、もう少し大きな視点に立って、たとえば、「一粒の種から始まり、テーブルに料理が出され、食料残渣が生まれ、さらにそれをエネルギーに変換する」といったサイクルの中で、弊社だけでは抜け落ちてしまっているところを補うような企業を探してはどうかと考えるようになりました。

 

事業創出部のメンバーは事業部との兼任

 リンカーズ  田野邊 リンカーズ  田野邊

ここまでのお話の中にもありましたが、御社の特徴として、事業創出部のメンバーが事業部を兼任しておられるということがあげられるかと思いますが…?

ヤンマー 小山様ヤンマー 小山様

事業創出部単独ではなく各事業部全体を見据えて、オープンイノベーションを全社的な大きい取り組みとしてやっていきたいという思いがあります。

弊社はもともと技術に自信があり、自前主義の傾向の強い人たちが多い会社です。そんな意識に風穴をあけ、オープンイノベーションのマインドをいかに現場に根付かせていくかということが最重要課題でした。

そのトリガーとしての役割を、事業部の中堅の人材に任せることにしました。敢えて兼任という形をとることで、事業創出部と事業部を繋ぐ大切なハブとなってくれることを期待してのことです。

技術のインバウンドには欠かせないマッチングサービスの使い分け

オープンイノベーションのスペシャリストから見たリンカーズ

 リンカーズ  田野邊 リンカーズ  田野邊

弊社リンカーズと他のマッチングサイトとの使い分けや違いなど、お気づきの点があればお聞かせください。

ヤンマー 小山様ヤンマー 小山様

リンカーズさんはこういったマッチングサービスの初心者にとっても、非常に扱いやすいのではないかと思います。

自分たちの中で求めるパートナー像を整理できていないケースも多々あるのですが、一から課題や探索の方向性を整理しご提案頂けるので非常に助かっています。また、提案書のフォーマットが見やすく、「何が必要なのか」ということが直感的に理解しやすいと感じます。

そして何より、面倒見よくコミュニケーションを取ってくれるということが、弊社でも積極的に利用を続ける要因となりました。比較的リーズナブルな価格設定も使いやすいところですね。

事業創出部の費用負担でインバウンドの敷居が低くなった

 リンカーズ  田野邊 リンカーズ  田野邊

ありがとうございます。先ほど価格の話が出ましたが、御社ではリンカーズをご活用頂く際の事業部との負担配分が特徴的ですよね。

ヤンマー 小山様ヤンマー 小山様

はい。リンカーズさんの探索サービスでは、3回に分けて費用が発生しますよね。弊社ではそのうち最初の2回については事業創出部で負担するという形式を取っています。

「やってみたいけれど予算が…」と二の足を踏む人たちのために、金銭的な敷居を下げることから始めてみました。「事業創出部が費用を負担してくれるのなら、まずは試してみよう」という気軽な気持ちで構わないので、ともかく技術のインバウンドを体感し、オープンイノベーションが持つ可能性を感じてもらいたかったのです。

また、3回目の費用は事業部負担としていますが、パートナーが見つかった場合に発生する成果報酬なので事業部側でも納得感があります。いつまでこの形式を続けるかはわかりませんが、現状を見ていると「他はあんなに使っているのに、うちは全く…」というような事業部同士の良い刺激が生まれてきているように感じています。

ヤンマーが見据える今後のオープンイノベーションの方向性

社内に根付き始めたオープンイノベーションマインド

 リンカーズ  田野邊 リンカーズ  田野邊

今後、御社でのオープンイノベーション活動の方向性について、どのようなお考えをお持ちか教えて頂けますか?

ヤンマー 小山様ヤンマー 小山様

弊社内にも少しずつですが、確実にオープンイノベーションの文化が根付いてきました。予算を事業創出部で負担して、やってみてもらうというフェーズはそろそろ卒業ではないかと考えています。

今までは、新しい取り組みにチャレンジすることに抵抗感を持っていた人たちも、一度は体感して手応えを得るという経験を積んできました。すると今度はそうした社員の方から「やって良かった。また他にはないのか?」という声が聞こえ始めています。事業創出部の担当者が「何とか引きだしていた」という今までの図式から、事業部から主体的に「こんなことがやりたい」という声が上がってくるフェーズに変わってきたのです。これは非常に大きな変化だといえるでしょう。今後もこのオープンイノベーションの文化を社内でしっかりと育んでいきたいと思います。

社内外でのコラボレーションで新規事業創出を目指す

 リンカーズ  田野邊 リンカーズ  田野邊

最後に、今後事業創出部としてどういった取組みを考えておられるかお聞かせください。

ヤンマー 小山様ヤンマー 小山様

やはり何といっても、0から事業を起こすのが本来の事業創出部の役割です。事業創出部がトリガーとなって、他の事業部や社外のパートナーを巻き込んでいくような新規事業を開拓していきたいです。

事業創出部では数年ほど前から社内外とのコラボレーションを積極的に行っています。その中の1つがアイディアソンです。昨年は食育というテーマで行い、その半数以上は社外からお越し頂きました。

毎回、銀行やメーカー、教育機関、農業関係者、メディア関係から芸人さんと、その顔ぶれは非常に多岐にわたります。通常では出てこないアイディアも飛び出し、毎回盛況な集まりとなっています。

この会合が起爆剤となり、自ら社外のアイディアソンやハッカソンに参加していく社員も現われました。社内だけでは凝り固まってしまいがちな社員を「ほぐす」という意味でも、非常に強い手応えを感じています。

事業創出部の使命は「ワクワク」を生みだすこと

どんな会社においても既存事業に最適化された仕組みの中で「事業創出」を試みることは容易ではありません。そういった意味では、事業創出部のメンバーは「変わった人たち」になることが大切なのではないかという思いを持っています。

「何をやっているのかよく分からないけれど、事業創出部はいつも楽しそうにやっていて、さらに成果を上げているな」、「ワクワク楽しそうだから、自分もやってみたい」…。そんな社内の視線を集めることができれば、それは必ず組織全体の意識変革へと繋がっていくはずです。

今後も継続的に「ワクワク」した姿勢を見せ続けることで、組織全体にオープンイノベーションマインドを根付かせていくことができればと考えております。

ヤンマー株式会社 小山博幸様からの学び

  • オープンイノベーションの精神を根付かせるために、事業創出部のメンバーは事業部で忙しく活躍する優秀な中堅社員が兼任。そうすることで、眠っているニーズを引き出すだけでなく、全社課題を共有できるという付加価値も生まれました。
  • 現在の事業内容からの不連続性にチャレンジすれば、従来の視点では予想も付かなかった画期的なアイディアを生みだすことが可能。
  • 社内外から参加できるアイディアソンを開催。
  • 仕事は楽しくするもの。既成概念に凝り固まらず、常に果敢に挑戦するマインドを持つことで素晴らしいキャリアを築くことができる。

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