今回、リンカーズの運営するビジネスマッチングに「IoT機器およびサーバ側ソフトウェアのプロトタイプ開発・試作パートナー探索」をご依頼下さった、パナソニック株式会社 アプライアンス社 事業開発センター Game Changer Catapult 事業開発総括の真鍋 馨様と、本件を受注した企業、株式会社アトムシステムのビジネス企画部 部長 近藤 敦仁様、ソリューション部 シニアソリューションマネージャー 西 正和様の3名様に、座談会形式にてお話を伺いました。
モノづくりマッチング
前編となる「ゲームチェンジャーカタパルト~巨大企業パナソニック内でのイノベーションへの挑戦」ではこのマッチングで開発にいたった新規事業テーマ「Bento @ your office」についてと、パナソニック内で活動しているゲームチェンジャーカタパルトというチームについてご紹介しています。日本を代表する大企業であるパナソニック内で「2025年のパナソニックアプライアンス社を作るプロジェクト」として2015年に構想がスタートしたゲームチェンジャーカタパルトの動きは、大企業内でイノベーションを起こす1つの形として非常に参考になるものです

後編となる「アジャイル開発 ~ パートナーに必要な1つの要素」では、「Bento @ your office」プロジェクトチームの空気感から見える、オープンイノベーションに必要なものは必見です。前後編合わせて是非ご一読下さい。

ゲームチェンジャーカタパルトの開発商品「Bento @ your office」

リンカーズ 長友リンカーズ 長友

今回開発された「Bento @ your office」とはどのような新規事業なのでしょうか?

パナソニック 真鍋様パナソニック 真鍋様

一言でご説明すると、”ランチ難民を解消しようというプロジェクト”です。忙しく働くビジネスパーソンは、食に関する困りごとがすごく多いですよね。特にランチで” 食べたいものが食べられない”そして” そもそも時間がない”というこの2つの難題が一気に解決できるIoTソリューションです。

具体的には、冷蔵庫などの保冷機能の付いたBOXに「アドオンユニット」というデバイスを後付けするとこれがIoT冷蔵庫になります。このIoT冷蔵庫に連動するアプリに目的や栄養状態を入れると「お勧めメニュー」、ユーザーさんの今の栄養状態、選んだメニューを食べた後の栄養バランスなどが表示されます。

メニューが気に入ったらキャッシュレスで支払いをすればQRコードが出てくるので、先ほどご説明したIoTの「アドオンユニット」でそのQRコードをスキャンすると、冷蔵庫のカギが開く構造になっています。

左・中央:「Bento @ your office」のアプリ   右:「Bento @ your office」本体

食事のログがたまることで、個人の嗜好に合った食事がさらにお勧めされることになります。
ゆくゆくはレストランなどとの提携によって、外食時のお薦めレストランとメニューが予約と決済も含めてできるようになることも想定しています。単なる利便性だけでなく、食べれば食べるほど健康になるなど、目的に合わせてパーソナライズされた食体験が楽しめます。

― この事業アイデアはどこから生まれたのでしょうか?

事業視点とパーソナル視点の両方がありますが、パーソナル視点をお話しますと、私の妻がまさにランチ難民でとても困っていたのです。ゲームチェンジャーカタパルトは、一人ひとりの困りごとに寄り添い、その解決を通じて社会課題にもアプローチしていきたいという想いがあります。ですので、身近な人が困っていることには、同じ困りごとを抱える人も多くいらっしゃると思うので、それを何とかしたいという想いがモチベーションの源泉にあります。現在、実証実験を含め、事業化に向けたフィージビリティースタディーを進めていまして、2018年度中の事業化判断を目指しています。

― 今後「Bento @ your office」はどのような進化をされるのでしょうか?

パナソニック 真鍋様パナソニック 真鍋様

未知数かついろいろな可能性を秘めています。分かりやすいユースケースとして、まず「ランチ難民」向けと表現していますが、レストランやシェアハウス、シェアオフィスなどの宅配ボックスみたいなことも可能です。いわゆる箱的なボックスであれば何でも良くて、中に入れるものも食でなくても良いため非常に拡張性があり、様々なシチュエーションが気軽に試せます。

アトムシステム 近藤様アトムシステム 近藤様

ロックや決済を「商流、物流、金流」とよく言いますが、我々は「商流」で、「物流」がロック、ものの出し入れや金融が「決済」。その全てを抑えたプラットフォームに成り得ると思っています。今回は商品がお弁当ですが、箱が何であれ、無人状態でのプラットフォームになり得ると思います

ゲームチェンジャーカタパルト立上げ

― 「Bento @ your office」の生みの親、ゲームチェンジャーカタパルトについてお教えください。

パナソニック 真鍋様パナソニック 真鍋様

2015年に進めた、パナソニックアプライアンス社横断で中長期戦略を策定するプロジェクトが発端です。


勃興するデジタル化のメガトレンドから逆算し、2025年に向けて当社が目指す姿と新規事業領域の構想をアプライアンス社社長へ答申しました。そのプロジェクトのコアメンバーだった4人で、当時それぞれ既存事業部門の業務と兼務で立ち上げた活動です。「2025年のパナソニックアプライアンス社を作るプロジェクト」として、世の中が大きく変わり、ビジネスの前提が大きく変わる中、どんどん「ゲームチェンジ」を起こせる新規事業を次々と生む発射台=「カタパルト」という意味を込めて、ゲームチェンジャーカタパルトとしました。

今はメンバーも徐々に増え12人ですが、それぞれのバックグラウンドは、営業・マーケティング、UXデザイン、技術、知財、企画と多様な専門性を持つ人材が集まっています。各プロジェクトについては、世間一般が思われるパナソニック=家電メーカー(ハードウェア)という入り口には拘らず、ユーザーの困りごとや社会課題に寄り添うサービスやソリューションのご提案をしています。

アトムシステム 近藤様アトムシステム 近藤様

真鍋さんは「パナソニックはハードウェアのメーカーだった”モノ”から”コト”の発想へ転換したいんだ」とよく仰っていて、「冷蔵庫という”モノ”を売りたいんじゃなくて、体験という”コト”を提供したいんだ」ということと理解しておりました。

パナソニック 真鍋様パナソニック 真鍋様

まさにその通りです(笑)。時間がかかりましたが、2016年7月にようやくゲームチェンジャーカタパルト立ち上げのプレスリリースも発表でき正式に活動が発足できました。デジタル社会の環境変化のもの凄いスピードを痛感し、相当なスピードで我々も変わらないと生き残れないという危機感がすごく大きかったです。普通にやっていてはオープンイノベーションはかけ声だけで終わってしまうので、制度も何も整ってなかったのですが、「とりあえずもうとにかくやってしまおう!」とチームがスタートしました

SXSW出展とゲームチェンジャーカタパルトでの開発手法

― 最初の新規事業テーマがソリューションとして、この「Bento @ your office」なのでしょうか。

その中の1つです。新規事業は一発必中というわけにはいかないので、これだけでなく、この他にもこういったPOC含めた新規事業を自ら社内ベンチャー的に回す役割もしています。広くアイデアを募る公募型のビジネスコンテストの運営です。1回目は年間で45件ほどの応募から6~7テーマを選び、約半年、外部のメンタリングなどもいただきながら、コンセプトやビジネスモデルのブラッシュアップ、プロトタイプを作り、「サウス・バイ・サウス・ウエスト(以下、SXSW)」に出展しました。そこで需要性を検討したり、ビジネスパートナーを見つけて、事業化に向けて進むのか、もう少し温めるのかを見極めています。

― 「SXSW」は作ろうとしているものの反応を見る場所という位置付けとのことですが
、初出展時(2017年3月)の反応は如何でしたか?

「SXSW」のイベントが開催される際のテキサス州オースティンには、世の中の新しいトレンドに感度の高い人達が世界中から集まる独特な雰囲気があります。「これはいつから売るんだ」「1,000台買うからすぐに販売してくれ」といった、かなり熱量のある方たちが来場されます。「ビジネスパートナーとしてタッグを組みたいから話しをさせてくれ」と言われて商談継続している件もいくつもあり、出展して非常に良かったと思っています。パナソニックとしては初の試みで、レストランを借りて「Panasonic House」として出展しました。

Panasonic House外観
Panasonic House外観
アトムシステム 西様アトムシステム 西様

弊社も、そういう新しいことがアメリカでどういう反響で、どんな雰囲気なのか体感したくて、代表と社長と共に伺わせていただきました。本当にすごかったですよ。大盛況ですごい人でした。

ポストイットで投票

パナソニック 真鍋様パナソニック 真鍋様

こういう感じでボートしてくるんですよ。10テーマくらい展示して、人気投票で気に入ったところにコメントを書いて貼ってもらいました。


あまり英語が得意でないチームもいましたが、自分で熱意をもって伝える姿勢も含めて様々な共感を呼びまして、出展は期待以上の成功を収めました。

SXSWに挑戦する意味としては、粗いコンセプト段階でも、お届けしたい価値を、想定する顧客を当てはめてフィードバックを得るやり方が、リーンスタートに必要だと思うからです。従来から、特にソフトウェア関連のビジネスでは当たり前なのかも知れないですが、70%程度のベータ版でもとにかく早く投入して、そこから得たフィードバックに基づいて早くバージョンアップをしていけばいいという考え方です。お客様から正しいフィードバックを早く得ると。

これは非常に納得できる手法で、IoTなどデジタル化を進めるビジネスをやるということはそういうことだと思います。50%にも満たないテーマもありましたが、とにかく出して反応を見てそれをフィードバックして仕様に反映し、何とか早く前に進めるということを行っています。ゲームチェンジャーカタパルトが特殊なのではなく、前提条件として世の中の常識に合わせています。

― ゲームチェンジャーカタパルトの社内環境はどのような感じですか?みんな同じテーブルに座っていらっしゃるのですか?

各々がベースとする拠点は、東京、滋賀(アプライアンス社の本社)、大阪とそれぞれですが、働き方としては、社外との接点が多いため、全員基本飛び回っています。もちろん海外もシリコンバレーや深圳、ヨーロッパなど、色々な接点で活動しています。東京(浜松町)のオフィスには私の席もフリーアドレスで存在はしますが、柔軟に在宅勤務もしますし、週の半分以上は出張もあったり。そこは各人のスケジュールによります。

パナソニックではフレックス勤務や在宅勤務などは相当前から制度として導入しています。ゲームチェンジャーカタパルトでは制度を柔軟に活用し、成果の質とスピード、つまり生産性を高める働き方を各人が意識しているということだと思います。

ゲームチェンジャーカタパルトのオープンイノベーション。-オープンイノベーションは目的ではなく、ただの手段

リンカーズ 長友リンカーズ 長友

パナソニックさんはオープンイノベーションという言葉をかなり使われていますが、どのような位置づけでしょうか。

パナソニック 真鍋様パナソニック 真鍋様

正解があるものではないですし、いろんな部署部門がそれぞれのオープンイノベーションをそれぞれのコンテクストで話すので、統一された答えはないと思います。


”ゲームチェンジャーカタパルトが考えるオープンイノベーション”では、会社の垣根のような「ボーダー」をなくした「ボーダーレス」化が必要だと思っています。垣根をなくす事で共感も生まれると思うので、そこはかなり大事にしています。

あと、環境変化のスピードに順応するためにも、今まで学んできたこと、固定概念をUnlearn(忘れる、捨て去る)する事を意識しています。世の中の一人ひとりの困りごと解決や”暮らしに寄り添うこと”を大事にしているので、そこに共感してもらえる社内外の垣根のないコラボによる共創をベースに、その困りごとの解決を素早く実現することを目指しています。

素早く実現しようとすると、自分たちだけでは到底できないので、必然的にオープンイノベーション型の動きになりますよね。オープンイノベーションは目的ではなく、ただの手段なので。それを「オープンイノベーションだ!」と掛け声的に言うことはしません。必然的にそうなっているだけです。

― アトムシステムさんはオープンイノベーションという単語を使うことは多いのでしょうか。

アトムシステム 近藤様アトムシステム 近藤様

オープンイノベーションという単語はほぼ使わないですが、行う上で重要なのは「リスクシェア」と「プロフィットシェア」かなと思っています。リスクを取らないと利益も出ないですし。イノベーション自体が一社でできるものでもないと思います。モノやストーリー、利益やリスクをシェアできる会社こそが、オープンイノベーションかなと思っています。

― オープンイノベーションのリスクのひとつに情報開示がありますが、そこはどうお考えですか?

パナソニック 真鍋様パナソニック 真鍋様

最初の頃によく悩んだネタです。全てを自前主義で情報も出さずにという考えで社外へ向き合うのであれば、そもそもオープンイノベーションなどと言わない方がいいと思います。ゲームチェンジャーカタパルトは、今はまだ小さいけれども、中長期的にはニーズが大きくなるような顧客価値をカタチにするため、事業コンセプトを作る段階から社外の色々な方々と顧客ニーズ起点で共創しています。これもデジタル時代では普通の事でしょうし、結局お客様に継続していいねと言っていただけたものだけが残るでしょう。ここは、、スピードが最大化できるやり方が大事なのだろうと理解しています。

あとがき

今回、「Bento @ your office」という新規事業テーマと、これを進めているゲームチェンジャーカタパルトというパナソニック内のチームについて主にお話を伺いました。大企業の中でも「もうとにかくやってしまおう」で進む事ができるのだと、新鮮な驚きがありました(相当な苦労の上での事と思われますが)。

続く対談の後半「アジャイル開発 ~ パートナーに必要な1つの要素」では、このゲームチェンジャーカタパルトというチームとアトムシステムという受注企業が非常に良い関係を築いて開発を進めている様子と、今世界で主流になっているアジャイル開発を進めるにあたり必要な要素について、お伝えいたします。

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