前回に引き続き、メリービズ株式会社の代表取締役 工藤 博樹様にお話しを伺っています。後編では2015年に立ち上げられ、理事を務める「一般社団法人 Fintech協会」について、「そもそもフィンテックとは!?」といったフィンテックにまつわる疑問などにお答えいただきました。

フィンテック業界全体の利益を追求する「一般社団法人 Fintech協会」

「Fintech協会」立上げ

日本最大級のグローバルFintechイベント Fintech Japan 2017の様子

リンカーズ 新田見リンカーズ 新田見

現在フィンテックが流行っていますが、「Fintech協会」を立ち上げられた理由をお教えください。


メリービズ 工藤様メリービズ 工藤様

Fintech協会立ち上げ前に「Fintech Meetup」というイベントを中心にしたコミュニティ団体を作ったのですが、その時から「フィンテックをもう少し日本で盛り上げたい」「金融のサービスがどんどん出てくるような環境を作りたい」と思っていました。コミュニティが発展するひとつの節目として、2~300人規模のイベントが開催できるようになったので、スタートアップ支援など、もっとやれることがあるのではないかと協会を作りました。

例えば、法律が古いために実はやりたいサービスが提供できなかった、提供できたとしても強い制約がかかってしまうという場合がありました。そのような問題は個社で監督省庁と交渉するのはなかなか大変ですし、監督省庁はあくまでも社会全体のために動く立ち位置なので個社対応が厳しい。そこで社会的なバランスとして、その問題を解決したほうがいいのかという部分を理解する中立な器として、皆さんの意見を集約して監督省庁や政治家のみなさんにその必要性をお伝えしています。

―協会立ち上げにあたって苦労した点は?
立ち上げ自体よりも、なにもない状態から協会としてのポジションや活動内容を理解して参加いただくことが必要であり大変した。当時参加していただいた会員さんには今も感謝で、勇気をもって私たちを信じていただけたことが本当にありがたいと思ってます。

また、協会として既特権化が生じてしまうと本来の目的に矛盾が起きてしまうので、Fintech協会に携わる時はあくまでFintech協会の人間として、競合企業も含めてみんなで作り上げる世界をどうやって前に進めていくかに注力しています。その姿勢がすごく大事で、現在そこは守られていると思っています。

―会社と協会の切り替えは難しそうですね。
個人として切り替わるところはそんなにないですが、経営者として悩ましいところはメリービズとFintech協会が利益相反になってしまうケースです。あとは自分のリソースバランスで、(Fintech協会とメリービズにどのようなバランスで時間を割くか)そこはまだ悩んでいるところです。

左:リンカーズ株式会社 新田見貴彦  右:メリービズ株式会社 代表取締役(Fintech協会 理事) 工藤博樹様

電子レシートの推進

メリービズ 工藤様メリービズ 工藤様

今Fintech協会では「電子レシート」の普及を進めています。世の中デジタル化されるのは必然だし、進むべきです。情報が適切な形で管理されて、利用者側にもその情報が還元されるような世の中を目指したいですが、実はメリービズとしては紙も大事にしているので、そこに関しても完全にメリービズとFintech協会が利益相反していますね。メリービズの経営者として、心の中では「デジタル化進むな」という気持ちも少しありますが(笑)、世の中の為を考えればデジタル化は進むべきですし、メリービズとしてはその環境に耐えうる新サービスを提供することが新しいチャレンジかと思っています。

―電子レシートについて詳しくお聞かせいただけますか?
現在買い物をすると紙のレシートか領収書を貰いますが、紛失時は再発行も難しいので、データ化してしまいましょうという構想です。現在でもApple Storeなどの一部の企業ではレシートではなく、自分のアカウントに電子領収書がメールで届くのですが、それが当たり前になるような環境を作っていきたいと思っています。アメリカの規格に準拠する形で日本の規格もでき上っているので、今はそれを広く使っていただけるようにメーカーさん、小売店さんにどう取り入れていただくか検討しているところです。

―Fintechサービスを広めていくためには何が大切になりますか?
難しい質問ですね。いろいろ障害はありますが、サービス開始以前に消費者へのリテラシーや安全性などの認知向上や、とにかく触れて、安心していただくための啓蒙活動が必要かと思っています。また、特にベンチャー企業などは個社で進められるには限界があるので、協会として会員企業みなさんがやりやすい環境作りのために、会員様同士のコミュニティ促進を行っています。

以前はフィンテックベンチャーやスタートアップが銀行を潰すような、あたかも対立関係にあるような騒がれ方をしていましたが、それは非常にナンセンスだと思っています。ベンチャーやスタートアップにはブランド力も顧客基盤もないですが、金融機関にないスピード感やサービスを持ちえます。お互いの過不足を等価交換じゃないですが、協力関係として築く方がお互いにメリットがあると思うんです。日本でもベンチャー企業が金融機関と組むケースが増えてきましたが、それが”いいサービスとしてお客様にとって還元できるような世の中ができ上っていくこと”に繋がれば、Fintech協会としては一番嬉しいです。

2017年9月の「FIN/SUM( フィンサム:金融庁と日本経済新聞社、Fintech協会が主催のフィンテック・サミット)」のパネルディスカッションでは、「『フィンテック』という言葉はなくなってしまったほうがいい」という意見も出ました。

現在は電子送金や支払いなどに於いて、サービスを利用するよりもその手間で躊躇してしまう現実があります。例えば、買い物しようとしていたがたまたま手持ちの現金がなくて買うことを諦めてしまうケースです。消費者にとっては欲しい商品や受けたいサービスが本来の目的なので、そのハードルをなくしたいです。「サービスインフラになりたい」という気持ちと近いのですが、要は意識しない存在になることが、本当のサービスになることなのかなと思っています。資金的なリスクを軽減する「保険」、欲しいものやサービスを手にいれる「決済」や「融資」、将来に備える「貯金」や「資産運用」など、全てが意識せずとも行えるようなサービスになることが理想的な姿だと思っています。

これからのフィンテック

メリービズ株式会社代表取締役であり、Fintech協会理事でもある 工藤博樹様

フィンテックとは

―そもそも「フィンテック」とはどのように捉えればいいのでしょうか?
お金について今まで実現できなかったことをテクノロジーで実現できる新しい動きとしてご理解頂ければと思います。例えば、製造業における金融で解決できる悩みや課題に、”新しい施設や設備投資の際のキャッシュフロー”などがありますが、通常はローンや融資が一般的ですけれど、今は資金調達の方法も増えているので、もしかしたらクラウドファンディングやICOなども可能かもしれない。お客様のやりたいことに適した金融サービスや商品が出れば、より活用いただけますし、皆さまのためになると思います。

―ちなみに経営されているメリービズではどんなFintechサービスを展開されますか?
メリービズは、おかげさまで2017年9月の「バーチャル経理アシスタント」リリース以来、顧客数・業種共に広がり、いろいろな知見が増えたので、それを活かしたFintechサービスも充実させていきたいと思っています。

フィンテックに結び付くところでは、基本である経営サービスの提供に加え、弊社で知見として蓄積した会計関係のデータを様々なサービスに還元できないかと準備しております。弊社ではキャッシュフローや、売掛金残高なども把握できますので、お客様のご要望があれば、そこからブリッジファイナンスやギャップファイナンスなど、貸借対照表上の資産に対する資金繰り改善やコスト削減に結び付く提案もできるのではないかと思っています。

―実現すれば中小企業はすごく助かると思います。
そうですね。情報はすごく大事で、既存の金融機関も財務諸表を中心とした融資審査を行いますが、弊社は、取引データや請求書明細などより細かい情報を豊富に持っているので、うまく活用できれば、今までできなかったような融資も可能になると思うので、そのシステムを金融機関さんと一緒に作っていけるかなと考えています。

フィンテック浸透の為に

フィンテックと既存サービス

リンカーズ 新田見リンカーズ 新田見

金融機関とフィンテック、そしてウェブサービスは今後どんな関係になっていくと思われますか?


メリービズ 工藤様メリービズ 工藤様

そうですね。金融サービスというフィルターによって意識していないかもしれませんが、決済でいえば、例えば「Amazon」さんや「LINE」さんなど通販事業サイトなどの特定の企業では既に新しいサービスが出来ています。新しいサービスがいわゆる金融以外のところで生まれてくる、バリエーションが生まれると思います。そこにおいて銀行は免許もお持ちで、いろいろなサービスを提供できるポジションであり、そここそが既得権とも言える部分でもあるので、いまはやはり非常に有利です。しかし今後は法律が変わることによって、捉え方や利用の仕方も変化すると思うので、新規プレイヤーが登場する可能性もありますから、弊社も含め、その中でいちばん組みやすい企業と組んで、よりサービスを充実させていく流れになるかと思います。

―先進的な金融機関は既にいろいろなフィンテックサービスを取り入れ始めているかと思いますが、金融機関に更に取り入れてもらうためにはどういったアプローチをされますか?
金融業界のみならずどの業界でも同じだと思いますが、お互いに必要としていて、提供できるものがパチッと合うことがすごく大事で、できればそれが一度きりの”取引”ではなくて長期的に満足のいく”関係性”になるというところだと思います。

例えば、ベンチャー企業としては、銀行が持ちえないデータを提供し、逆に銀行と組むことで免許がないとできないサービスが可能になる。そういった部分が結び付けばWIN-WINの関係が築けますね。実際にデータやベンチャーのスピード感の需要は高まっています。自社サービスのカニバリゼーションを防ぐ為にも、うまく外部の企業を使うのも一つの選択肢なのかなと思っています。まさにオープンイノベーションですよね。お互いの強みや弱み、制約条件などを外してくれる組み方というのは、非常に面白いと思います。

フィンテックサービスの価値を伝えて使って気軽に使ってもらう為の地道な活動

リンカーズ 新田見リンカーズ 新田見

今後、企業、特に製造業にフィンテックが浸透して恩恵を受けるような世の中になるためにどんなブレイクスルーが必要でしょうか?


メリービズ 工藤様メリービズ 工藤様

先ずは使ってもらわないとダメですよね。まだまだ日本では食わず嫌いのような風潮があると思います。イノベーションって一人や一社でできるものではなくて、受け手側が大事に感じて使いたくなるという部分にもよると思うので、みんなで育てる気持ちがあるといいのかな、と思いますね。

最先端の研究開発をやっている企業は意識をして捉えているかもしれませんが、そこになじみのない個人商店や工場などでも新しいサービスを使うことで触れられると思います。そういう個人が増えることが、新しくて良いサービスが普及しやすい環境を作り出すと思います。

―(製造業の中の)個人事業主や中小企業にフィンテックサービスを利用してもらうためには心理的なハードルをクリアする必要があると思いますが、サービス提案の際は、安全性を推して使用を勧めるのか、「先ずは気軽に使ってみてください」という紹介レベルに留めるか、どちらになりますか?
難しいですね。ベンチャーは最初のお客様の獲得が本当に大変です。最初の100社は知人だったり、少しくらい不便があっても許してくださったり…。初動時に賛同いただいた方々には今も感謝しかありません。そこから先になるとだんだんステージも顧客層も変わります。新しいものを求める方から保守的な方へと近づきますが、そういう顧客を持たない限り我々ベンチャーは育たないと思います。

解答としては漠然としているかもしれませんが、説明の仕方としては、自分たちの価値をしっかりと伝えることだと思っています。正直、実績もない中で見栄を張っても仕方がないのでそこはもう正直に。そして提案先のお客様に対してどうお役立ていただけるかを共に考え、イメージが持てるかだと思います。

―一気に広めるというよりは、対顧客と密に意見を交わして改善を行うという姿勢が大事なんですね。
そうですね。一気に広まるサービスもあるとは思いますが、結果として価値が提供できているから広まるのだと思います。その価値を自分たちがよく理解していない間はまずそこが何かを熟考しないと、結果としてお客様の期待を裏切ることになると思います。広げていくためにはその間にいただいた苦情なども含めたフィードバックをサービスに還元して方向性を定めていくことだと思います。

―先程、クラウドファンディングという話しもありましたが、その他にも活用できるフィンテックはありますでしょうか?
例えばなんらかのリスクがあれば保険が使えるかもしれないですし、資金調達にもいろいろな方法が増えています。ピンポイントで考えますと、給与の支払い手数料や海外からの資材調達されている企業だと海外送金に関わる手数料をいかに減らすかなど、問題に沿った様々な新サービスを活用するのが良いと思います。

Merry Biz工藤様からの学び

工藤様へのインタビューを通して、「中小・ベンチャー企業をバックオフィスから支えたい」という強い”想い”を感じました。中小企業の経営者の方々は本業に加えて経理などバックオフィス業務もご自身で行っているため、それが負担となり成長の足かせになっている企業様も多いと聞いています。バックオフィス業務の負荷が高く本業に割く時間が少ないとお悩みの方、本業成長のためにバックオフィス業務を改善したいと考えている方はMerry Bizのようなバックオフィス支援サービスを利用することで大きく経営が改善する可能性があるのではないでしょうか。

世の中のデジタル化の波は止めることができず、今後身の回りの紙は徐々にデジタル化されなくなっていく。フィンテックが浸透することで資金調達手段が増えたり、企業の会計関係のデータが資金繰り改善やコスト削減に活用できたりするなど、経営の負荷を下げることができるなど、多くの学びもいただきました。

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